You are smart.を疑問文にすると、Are you smart?のようにbe動詞と主語を入れ替えて疑問文をつくります。
You can speak English.を疑問文にすると、Can you speak English? のように助動詞と主語を入れ替えて疑問文をつくります。
なぜ、動詞(助動詞)と主語を入れ替えるのかは、下記リンクで説明しているように、語順を入れ替えることで、肯定文との区別をつきやすくする理由があります。

ところが、一般動詞が出てくるYou speak englishの疑問文は、Speak you english?ではなく、Do you speak English?となり、突如として「do」が登場するのです。しかも、この疑問文の「do」は私たちが一般的に知っている「(人が物事を)行う」という意味の「do」ではなく、かといってそれ自体に意味を持たなさそうです。疑問文で使われる「do」はどこから来たのでしょうか?逆を言えば、肯定文においてYou do speak English.のように、
主語+do+動詞の原形という一貫したルールがあれば、疑問文の際は、前述で示した通り、動詞と主語を入れ替えることで済むので、現代の英語はずっとわかりやすく容易になっていたとも言えるでしょう。
*ただし、強調文のニュアンスでは現代英語でも、主語+do+動詞の原形の形で使われたりします。
例)You do like English.(あなたは本当に英語が好きだね)
疑問文のdoは何なのか?一体どこから現れたのか?なぜ肯定平叙文では現れないのか?学校の授業でも、その理由について言及されず、そういうものなのだと教えられて無理やり飲み込んでしまう人も多いのではないでしょうか?
この謎を探る為に歴史を遡ってみますと意外な事実が分かりました。実は古英語では、一般動詞を使った文でも、疑問文を作るときには、Speak you English?のように、主語(S)と動詞(V)を入れ替える「VS型」が主流だったのです。
A. Speak you English? (古英語)
B. Do you speak English? (現代英語)
AからBへの発達過程の中で、AよりもBの形を取ることの方が、何か積極的な理由や利点があったのでしょうか?大きな違いはその語順ですが、Bの方が「主語+動詞+目的語」の語順が平叙文のまま保たれます。古英語では比較的語順の自由度は高かったのですが、だんだんと「主語+動詞+目的語」の語順が基本的な語順として定着してくると、疑問文でもそのルールを堅持することが優先され、「do」がそのための装置として好都合だったという理由がまず考えられます。
現代英語では、下記のbの例文のように、動詞と目的語の間に副詞の介在は許されず、動詞+目的語が固定化された語順となっています。
a. He often meets friends.(〇)
b. He meets often friends.(×)
それでは、なぜ、「do」がこうした機能役割を担うことになったのでしょうか?この「do」の起源には定説と呼ばれるものが無く、諸説存在しますが、もっとも有力だと考えられているのが、使役動詞としてのdoを起源とする説です。古い時代、doは現代語と同じく、「する、行う」という意味で使われるほか、使役動詞としてcauseの意味で用いられ、主人が家臣、召使いなどに命令などによってある行為をさせるというような状況でよく用いられました。
例えば次のような文章が昔に見られました(分かりやすく、現代の単語に置き換えています)。
・The King did people build a castle.(王様が人々に城を建てさせた)
このdoは目的語と動詞を後続させて、「~に…させる」という意味を表しており、現代英語のmakeやhaveのような使役構文と類似しています。でもこの文章はよく考えると「王様が城を建てた」と同じ意味ですね。主人が家来などに命令などによってその行為をさせるという文脈で多用された為、もはやbuildしたのは大工にもかかわらず、権威者が建てたと言えてしまうのです。そうなると、buildの意味上の主語は無くても意味が通じるようになってしまい、
・The King did built a castle.
となり、doの使役の意味が希薄化されていき、make,haveやlet等のような他の使役動詞の存在もあってその立場を譲ることになります。上記の文を疑問文にしたい場合は、
・Did the King build a castle?
とDidを主語の前に置くことで肯定文との区別をできるようにし、しかもこの方法は、英語の語順は主語のすぐ後ろに動詞を置きたい英語の「好み」「基本ルール」にも合うため、疑問文の語順は「Do+主語+動詞+目的語」が定着していったと考えられます。
諸説ある原因から唯一を探り当てるのは難しく、むしろ言語というのはある時点から突然生み出るものではない為、「語順の好み」とか「doの意味の希薄化」といった条件が重なり合って、疑問文の今の形が定着していったと考えるのが自然です。現代の英語でも、語順は平叙文のままでも語尾を上げることで疑問文にもなりえますし、常に言葉のルールは揺らいでいるといったことを念頭に置くことも大事かもしれませんね。
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